top of page

2025/02/16 サイトデザイン変更


シュガーライフ
私はその頃、幼い子供であった。 当時既に世間に名を馳せていた二人の第一子として生を受けた私は、それなりに好奇の目に晒されながらも、それなりに放っておかれたおかげで、すくすくと丈夫に腐らずに育つことができた。私は両親が一生懸命考えてくれたステキな名前が自慢であり、生まれた時か...
2020年2月1日


マリー・アントワネットの華麗なる遊戯
あれはまだ高校生の頃のことだ。 英智の部屋に遊びに行っていた帰り、大きなガラス窓から夕暮れが差し込む玄関ホールを抜けようとしたところで、名前を呼ばれて振り返った。 正面の階段からゆるやかに降りてきたのは、英智の母だった。彼女が家にいるのは珍しかった。英智の両親はたいてい家を...
2020年2月1日
コール・ミー、ダディ!
敬人が園門をくぐると、小さな彼はちょうどお友達たちと砂場で丸丸とした泥インコを大量生産しているところだった。彼は園庭を突っ切ってくる敬人の姿を見つけると、「敬人だ!」と立ち上がって喜び、駆け寄った。 「今日も楽しく遊んでたか?」泥まみれの手が服に触れる前に、やんわりと彼の手...
2020年2月1日


ヒーロー・ショーにようこそ
「『嫌い』だからというよりは、ただ気が引きたいんですよね」 一通りの説明の最後に、先生はそう付け加えた。 「お人形みたいで目立つ子なのもあって、本人はただ一緒に遊びたいって思ってるだけなんです。でもヒーローごっことか彼の好きな遊びを、あの子は一緒にしてくれない。だから気を引...
2020年2月1日


ナンバーコール
「いやだよ、そんな名前」 病室のベッドの上で、読み上げられる候補の羅列に英智は静かに首を横に振った。 「僕だったらそんな名前つけられた暁には、この世に絶望してその日のうちに命を絶つ」 「何もそこまで言わなくたっていいだろう」 敬人が眉間に皺を寄せながら手帳を閉じた。...
2020年2月1日


オオカミの住処
マンションのエレベーターホールで彼は首を傾げていた。いくらボタンを押して待っていても、ちっともエレベーターが降りてこないのである。ドアにはなにやら張り紙が貼られているが、高いところにあるので彼の身長では背伸びをしても何が書いてあるかまで読むことができなかった。...
2020年2月1日


フツウじゃない家のどこにでもある話
彼が生まれてからの数年間、英智は家よりも病院で過ごすことの方がずっと多かった。故に、彼の育児をほとんど敬人が一人で行ったことになる。彼に食事をさせ、おしめを替え、風呂に入れ、夜泣きをすれば車に乗せて泣きやむまで夜のドライブに付き合った。職場と病院と自宅を何度も往復し、さすが...
2020年2月1日


デンキネズミは夢を見る
読んでいた文庫本から目をあげて病室の壁に掛かる時計を確認すると、英智は静かにベッドから降りて、病室を出た。病棟の最上階に位置する、滅多に入院患者を受け入れることのない個室の並ぶ廊下は、いつも静まりかえっている。 廊下の窓から外を見おろすと、ちょうど正門から子供用のマウンテン...
2020年2月1日


おしゃべりインコの憂鬱
生まれた時から、彼の隣にはインコのぬいぐるみがいる。 特別珍しくもない、至って平凡な黄色と緑色のセキセイインコのぬいぐるみである。 どこへ行くにも連れて行くので、おばあちゃんやおじいちゃんどころか、敬人や英智とよりも彼と共に過ごし、彼を支え、彼を育てた隠れた功労者だ。...
2020年2月1日


ハングリー・ホリデー
「敬人、あまり僕を見くびらないでほしい」 うんざりしたようにため息をつくと、敬人を半ば家から追い出すようにしながら英智は言った。 「確かに僕は同年代の男子に比べて家のことを何もさせられずに育ってきたけれども、あの実家に住んでいた高校生の頃ならまだしも、今なら僕だって掃除や洗...
2020年2月1日


レイニー
彼はその頃、幼い子供であった。 当時既に世間に名を馳せていた二人の第一子として生を受けた彼は、透き通るような薄い金色の髪に、マシュマロのように白くもちもちとした柔らかい頬を持っていた。平たいおでこにはめまぐるしく日々追加されるたくさんの知識と興味関心事で溢れ、ぷっくりとした...
2020年2月1日
bottom of page